人材流入より米国内雇用?H-1BとH-2ビザをめぐる議論の行方 / Domestic Jobs Over Immigration:「アメリカ人事界隈」#アメリカHR #HRLinqs #HRLinqsLearning
- 榊原 将/HR Linqs, Inc.
- 2月23日
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米国のH-1Bビザプログラムは高度人材を受け入れる制度として知られていますが、米国人労働者を守るために大幅な見直しが必要だという声が上がっています(Domestic Jobs Over Immigration)。
国会への提言では、H-1Bの年度上限を7.5万件以下に制限し、非営利・研究部門の無制限枠にも制限を導入するなど、雇用機会を増やす改革案が示されました。
また、H-2A/H-2Bなどの一時労働ビザも厳格化すべきとされ、180日の帰国義務や家族帯同の禁止など、“一時労働”の本来の意味を徹底させる取り組みが求められています。
「主要な点」
H-1Bビザの基本概要:H-1Bは専門職(Bachelor’s Degree相当)以上の外国人を雇用できるビザであり、ITやエンジニアリング、医療など多岐にわたるが、年度ごとに約8万5千件の上限が設定されています。
米国人労働者への影響:一部の専門家は、H-1Bは必要な高度人材を補う手段として評価する一方、特に派遣会社などが低賃金で外国人を雇用し、米国人の職を奪っていると指摘しています。
STEM分野の“人材不足”の再検討:STEM分野には失業や非STEM就業の米国人が多数存在するというデータがあり、「本当に外国人を大量に受け入れる必要があるのか?」という疑問が提起されています。
非営利・研究機関の無制限枠:大学や研究機関などはH-1B枠の上限を免除されますが、総数を7.5万件以下に制限すべきと提唱しています。
H-1Bビザ期間の短期化:提案によれば、H-1Bの滞在期間を2年+2年延長の計4年と限定し、グリーンカード申請中でも自動延長を認めない方向で検討されています。
派遣企業のスポンサー禁止:米国内派遣企業による外国人労働者の大量雇用を問題視し、違法リクルート手数料や低賃金労働の温床とされるため、H-1Bスポンサーを禁止すべきと提案しています。
高賃金企業優先のビザ配分:H-1Bの需要が枠を超える場合、最高額の賃金を提示する雇用主から優先的にビザを配分するという仕組みが示唆されています。技能の高い労働者を優先的に受け入れる狙いです。
H-2A/H-2Bビザの問題点:農業・季節労働者向けのH-2A、H-2Bでも、長期滞在や家族帯同が実質的に定着化するケースがあり、“一時的労働”の趣旨を逸脱しているとの声があります。
滞在期間の厳格化と家族帯同の制限:H-2ビザでの家族帯同を認めず、年間の半分は母国に滞在させることで、ビザの一時性を維持し、不法滞在や定住化を防止するという提案もあります。
政策の行方と企業の対応:これらの提言は立法化されるか不透明ですが、企業としてはビザ施策の先行きを注視し、賃金水準の引き上げや米国人労働者の育成策にシフトする可能性が高まっています。
「企業の検討点」
ビザ依存のリスク評価:ビザ改革による人材確保の不確実性に備え、米国在住の人材採用や国内のリスキリングに投資を検討する。
派遣モデルの見直し:外国人労働者の派遣活用は規制強化が想定されるため、直接雇用や協力企業との関係強化など別の戦略を模索する。
高賃金オファーの検討:H-1B割当が賃金水準による優先制になった場合に備え、企業として賃金引き上げや報酬体系の再構築が重要。
ローカル人材の教育・育成プログラム:米国人労働者の技能アップを促す社内研修や奨学金制度などを設計し、長期的な人材パイプラインを確保する。
「Q&A」
Q1: H-1Bビザの利用企業が規制強化にどのように対処できますか?
A1: 賃金水準の見直しやローカル人材採用強化を進め、ビザ依存度を下げる施策を取ることが効果的です。
Q2: ビザ制限が厳しくなると、人材確保に苦戦しませんか?
A2: 短期的には難しくなる可能性がありますが、企業としては国内教育やリスキリングを促進することで中長期的な人材戦略を築く必要があります。
Q3: 派遣企業のスポンサー禁止案が実現した場合の影響は?
A3: 外国人ITエンジニアなどを大量採用する派遣モデルが難しくなり、直接雇用へのシフトや賃金上昇が予想されます。
Q4: H-2A/H-2Bビザの厳格化で農業・季節労働はどうなるでしょうか?
A4: 労働者不足が生じるリスクがあるため、農業企業は作業工程の自動化や国内労働者の確保策を強化する必要が出てきます。
Q5: STEM分野における“人材不足”説への懐疑はどう具体化されていますか?
A5: STEM学位を持ちながら失業中、またはSTEM職に就いていない米国人が200万人以上存在するというデータが根拠となっています。
Q6: H-2Bビザの期間を1年未満に短縮する提案の意図は何でしょう?
A6: 季節労働の枠をより厳密に管理し、長期滞在による違法就労や家族帯同による定住化を防ぐ目的があるとされています。

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