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執筆者の写真榊原 将/HR Linqs, Inc.

企業が提供するクリエイティブなインセンティブとは

ワクチン接種が開始されてから4か月強、多くの州で対象者が拡大され、供給が十分になされている状況でCOVID-19の収束に期待が高まっている段階である。

雇用マーケットも好調であり、米国での求人数は過去2年間で最高の数値を示している。他方で、人手不足で多くの企業で人探しが難しいようである。COVID-19で働き方が変わったことにより、従業員(候補者)が企業に求める条件も異なってきている。


特に出社をする必要があり、対面での業務が恒常的に必要な企業は今後も人材確保が難しい可能性が考えられている。


保険会社のPrudential社が行った調査によると、労働者の約33%はフルタイムでオフィス出社をしなくて良い企業を求め、既存の従業員の約50%はハイブリッド勤務を提供していない企業からの転職を検討していると発表している。


大手企業では賃金の引き上げと雇用確保の戦略としており、コストコ社は3月に時給を15ドルから16ドルに引き上げ、ウォルマート社でも15ドル以上の時給、フェデックス社では夜間業務に従事する従業員に時給2ドルを上乗せしての支払いを開始している。


人手不足の状況になると、色々とクリエイティブなインセンティブを提供することで雇用の促進を図ったり、既存の従業員の転職防止を行う企業が増加する。


パンデミック禍の中での雇用維持を目的としたインセンティブの例を紹介したい。


「育児やペット」


◦ 求職者の約18%が職場復帰のハードルとして育児をあげているため、育児休暇の充実


◦ COVID-19での在宅勤務によりペットを飼う労働者が増加したことにより、ペットのための保険提供やPawternity Leaveと呼ばれるペットに優しい休職の提供


「ワクチン」


◦ COVID-19によって一気に知名度が広まったInstacart社では、COVID-19のワクチンを接種することで25ドルのインセンティブを提供


◦ コンビニチェーンであるRoyal Farm社では、COVID-19のワクチンを接種することで50ドルのインセンティブを提供。また2021年度末までに4,500人の雇用を目指しており、新規雇用者には500ドル、既存の従業員には300ドルの紹介ボーナスの提供。


◦ Kroger社はCOVID-19のワクチンを接種することで100ドルのボーナスの提供。医療上や宗教上の理由でワクチン接種が出来ない従業員に対しても、同社の安全基準に関するトレーニングを受講することで同額のボーナスの提供。


「キャリア・フェア」


◦ タコベル社は4月21日に全国の2,000店舗においてHiring Partyと称した大規模な人材募集を行う。駐車場等の距離が保てる場所で、車内にいたままで面接を行うことを可能とする。また新生児がいるマネージャーには4週間の有給休暇が提供される。


◦ CarMax社は1月にカーブサイド・キャリアフェアを実施して、150のポジションでの募集を行った。新規雇用者には最大で5,000ドル、バイリンガルの人員には最大で6,500ドルの新規採用ボーナスが提供された。


◦ ユナイテッド航空は2020年2月にフライト学校を購入し、パイロットの育成を強化することを発表した。2030年までに5,000人のパイロットの育成をすることを目的とし、学生を対象に総額120万ドルの奨学金の提供する予定である。また採用をする上で50%は女性と有色人種を選択という明確な基準を打ち出している。


「ウェルネス・プログラム」


◦ カリフォルニア州のMS International社は3月に教育サービス会社であるMy Private Professorと提携をして、幼稚園から12年生までの従業員の子供を対象に1対1での家庭教師を無償で提する。この取り組みは社内調査によりCovid-19禍による学業の遅れに対してストレスを感じている従業員が多かったことを踏まえて「ストレス軽減」を目的にしている。


◦ イリノイ州にあるAbbVie社では社内でCovid-19 Childcare Relief Fundを設置して、育児や学習支援費用を必要とする従業員に最高1,500ドルの支援金を提供している。

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