Big Four vs. 大手法律事務所:法務サービスの競争はどう変わる? / Big Four vs. Law Firms:「アメリカ人事界隈」#アメリカHR #HRLinqs #HRLinqsLearning
- 榊原 将/HR Linqs, Inc.
- 3月1日
- 読了時間: 4分
KPMGがアリゾナ州でABS(Alternative Business Structure)のライセンスを取得し、米国で初めて法務サービスを正式に展開できるBig Fourとなりました(Big Four vs. Law Firms)。
従来はABA(アメリカ法曹協会)の規定で会計事務所が法務を手がけることは制限されていましたが、アリゾナやユタの新制度を活用することで非弁護士が法務部門を所有・経営する道が開けたのです。
AIを中心とした先端技術と法律を融合したKPMGの新サービスは、既存の法律事務所や社内弁護士の人材市場に競争をもたらし、大手企業の法務戦略に変革を起こす可能性があります。
「主要な点」
ABS(Alternative Business Structure)の概要:アリゾナ州などが認める制度で、非弁護士が法務事務所を所有できる仕組みです。KPMGはこのライセンスにより、法務サービスを合法的に提供可能になりました。
Big Fourの米国法務参入の壁:ABAルールにより、法律事務所は弁護士が100%所有する必要がありましたが、ABS制度により部分的に緩和化。KPMGが先鞭をつけた形となります。
テクノロジーと法務の融合:KPMG Law USがAI・高度なITソリューションと法的助言をセットで提供し、従来型ローファームとの差別化を図ります。
対象サービスとビジネスモデル:契約管理、オペレーション最適化など“Legal Managed Services”を包括的に展開するよていです。顧問契約やプロジェクト単位での支援を想定しています。
非監査クライアント向け制限:アリゾナ最高裁の条件により、KPMGは既存の監査クライアントには法務サービスを提供できません。これは利益相反回避のためです。
米国最大の法務市場へのインパクト:米国は世界最大規模の法務サービス市場です。KPMGの参入により、従来のローファームだけでなく税務・コンサルと連携する包括サービスが期待されます。
人材流動と競争の激化:大手ローファームからKPMG Law USへ移籍する弁護士が増える可能性があり、トップ弁護士や法務専門家の争奪戦が激化することが予想されます。
他州への拡大可能性:現在はアリゾナが先行していますが、今後ユタやワシントンなどでも類似ライセンスが拡大し、他のBig Fourも追随する可能性大です。
潜在的なリスクと批判:非弁護士による法務サービスが「弁護士の独立性」を侵害するとの反対意見も強く、規制当局や法曹界からの抵抗が予想されます。
将来の法務サービスの変革:ABSが普及すれば、会計・IT・法務を一体で提供する「ワンストップサービス」が主流化し、法務領域のデジタル化が加速することが予想されます。
「企業の検討点」
監査と法務の分離徹底:監査クライアントに法務サービスを提供できないため、利益相反や公正性を維持するルールを明文化する必要がある。
ローファームとの競争優位の確立:AI・ITソリューションと法的専門知識を融合し、従来型ローファームと差別化するビジネス戦略を構築する。
組織体制の新設と人材確保:法務サービス部門の独立運営を踏まえ、弁護士やパラリーガル、ITエンジニアなど専門人材を確保し、相互連携を図る。
他州および海外法務市場への展開プラン:アリゾナ以外で同様のライセンスが取得可能となる見込みを考慮し、グローバルサービス拡大や多拠点展開を検討する。
「Q&A」
Q1: なぜBig Fourが法務市場に参入するのでしょうか?
A1: 会計・ITとのシナジーを狙い、クライアントにワンストップのソリューションを提供する戦略です。
Q2: ABS(Alternative Business Structure)とは何ですか?
A2: 弁護士以外の出資や経営を認める仕組みで、アリゾナなど一部の州が導入している制度です。
Q3: 既存のローファームはどのような影響を受ける可能性がありますか?
A3: Big Fourによる法務参入により、優秀な人材や大口クライアントの取り合いが激化する可能性があります。
Q4: 監査クライアントには法務サービスを提供できないのはなぜですか?
A4: 利益相反を防ぎ、公正性を保つためにアリゾナ最高裁がライセンス上の条件として定めています。
Q5: なぜアリゾナで先行導入されているのでしょうか?
A5: アリゾナ州がABAルールに対して独自の改革を進め、ABSを制度化したため、KPMGが米国で参入する最初の州となりました。
Q6: 他の企業は法務参入に興味を示していないのですか?
A6: 今後は他業種でもABS制度を活用し、法務サービスに進出する可能性があります。
Q7: AIとの連携で具体的にどのようなサービスが期待できるのですか?
A7: 契約レビューやリスク分析、コンプライアンス管理を高速化し、弁護士の意思決定を支援するAIツールの導入が見込まれます。

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