• 榊原 将/HR Linqs, Inc.

大企業のオフィス再開発表から考える、中小企業に出来ること

ほんの2か月ほど前の7月上旬にはCovid-19の収束を間近と感じ、多くの企業が9月初旬のレイバーデイ前後を目途に(ハイブリッド出社)でのオフィス再開を目指していた。


しかしデルタ株での感染者増加に伴い、誰もが知る大企業がオフィス再開の時期を10月中旬や2022年まで延期をするという発表が相次いで行われたのが8月前半である。


そしてオフィス再開の延期の発表と共にワクチン接種を義務付ける企業も増加している。大企業のオフィス再開の方法を踏まえて、我々中小企業が行えることを改めて考えてみたい。

ワクチン接種義務

ワクチン接種の義務化は賛否両論の多い方針である。

ワクチン接種者であっても、義務化には反対という人も多い。


米国最大の雇用主である連邦政府が、ワクチン接種義務(または週1回のテスト)という方針を打ち出した。この方針は民間企業にも影響が出ることを期待した上で出された方針である。


しかしながら、調査会社大手のGartner社の調査によると、全従業員にワクチン接種を義務付ける予定としている企業は10%にも満たない状況である。


その背景には考えられるリスクが2つある。


① 訴訟リスク

ワクチン接種の義務化で必ず検討が必要なのは、公民憲法第7条(Title VII of Civil Rights act)とAmericans with Disabilities Act(ADA)である。健康上、宗教上の理由でワクチンを接種できない従業員への対応を考える必要があり、またその他の理由でワクチン接種をしない従業員への対応も事前に検討しておく必要がある


② Great Resignation(大辞職)のリスク

現在の米国は売り手市場である。


2021年4月に919万件、5月に948万件、6月に1,007万件の求人があるが、他方で求職者は860万人しかいない(ちなみに多くの州での人口は1,000万人以下であり、例えばニュージャージー州の人口は890万人ほどであることを考慮すると求人数の多さのイメージがつき易い)。


求人が多く出ているため転職活動も活発であり、4月に400万人、5月に360万人、6月に390万人が辞職をしており、このような状況を現在米国では「Great Resignation(大辞職)」と呼んでいる。


この点、つまり人材の流出が2つ目に考慮をすべきリスクとなる。ワクチン接種義務を発表した企業は、一時的な人材の流出があった場合でも円滑に業務を継続できるだけの基盤がある大手企業であり、また雇用においても中小企業よりも優位性がある。


中小企業が同様の対応を行えるかというと、中々難しいのではないだろうか。


異なる視点でのオフィス再開

従業員へオフィス出社を促すには合理的な理由を探すべきということは良く言われているが、理由があっても説得をすることは容易なことでは無い。


リモートワークとオフィス出社について従業員と企業の視点を考えてみたい。


o リモートワーク

Covid-19以降、特に従業員が企業に求めることの一つにFlexibilityがある。リモートワークは「Where, When, and How to Work(どこで、いつ、どの様に働くか)」ということを、従業員自身が決めることを可能とする。


o オフィス再開(出社)

従業員同士が集まることでコミュニケーションの活性化に繋がり、同じ空間にいることでよりクリエイティブな環境を生み、それが企業文化を構築する(そして、それが生産性の向上に繋がる)ことが企業側が考えることである。


リモートワークからオフィス再開(出社)に切り替えることは、従業員にとっては短期的な視点からのFlexibilityが失われるデメリットが大きい一方で、企業は長期的な視点でのメリットを考えている。


従業員、企業側が双方に異なる視点から見ているため、出社に対して合理的な理由付けをし、従業員を説得することはなかなか難しいのではないだろうか。


オフィス再開において中小企業が検討出来る点

それでは、中小企業がオフィス再開を行う上でどんな事を検討することが出来るのか。


大企業が大胆に、そして一気にトップダウンでオフィス再開の発表を行うのは、従業員数が多いゆえに統率を取れる方法が限られるためである。


他方で中小企業は、ある程度従業員の意見を聞ける規模であることがメリットになる。

また、どんなに慣れ親しんだことでもブランクがあることで、再度慣れるまでには時間がかかる。


多くの企業そして従業員は過去18か月間に渡ってオフィス出社をしていないというブランクがある。企業は従業員へ出社を説得する代わりに、大企業とは異なる企業規模をメリットとして捉えて、従業員と共にオフィス再開を計画することでこのブランクを緩和し、出社を前向きに捉えてもらうことが可能になる。


o 事前調査

従業員サーベイをとって、オフィス再開に関しての条件、不安・不満を聞いた上での解決策を事前に講じる


o テスト再開、もしくは再開を段階的に行う

核となる従業員、部署毎、少人数のグループ分けをした上で、オフィスを試験的に部分再開。追加・修正すべきルールや問題点を見つけ改善した上で、オフィス出社の日数や出社人数を増やす


方法は一つではない。この記事が、オフィス再開を検討することで少しでもヒントになればと思う。

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