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  • 執筆者の写真榊原 将/HR Linqs, Inc.

レイオフとファーロー:実施と留意点

COVID-19の影響によるビジネス活動の縮小や停止を行っている企業が増加している。その結果、失業保険の申請数もここ3週間で1,700万件を超過している。

コロナ騒動が起こる直前まで全米の失業率は3.5%前後と、歴史的にも低い数値が長期間続いていたことを考えると、ここ1か月程の雇用マーケットの急落振りは驚く限りである。

2020年3月27日(金)に可決されたCARES Actに基づき4月3日(金)から特定の銀行を通して申請が可能となったPaycheck Protection Program (PPP)により、企業はビジネス運営にかかる必要経費のローンができるようになる。


さらに、既存の従業員を継続雇用することでローンの返済を免除されるため、企業としては、従業員を解雇する前にローンの申請を模索することが考えられる。

しかしながら、企業存続のためにやむを得ず従業員を解雇もしくは休職にしければいけない場合もある。


「レイオフ」

レイオフは解雇を示す際に良く使われる言葉ではあるが、本来の意味合いとしては業務量減もしくは企業の財政状況悪化により従業員を一時解雇することを指し、再雇用が前提となる。


日本では解雇の際にリストラという言葉を使用する場合が多いが、リストラとはリストラクチャリング(Restructuring)の略語であり、企業の再構築を意味する。英語ではReduction in Force(RIF:人員削減)と呼ばれるものが日本のリストラに近い表現となる。

COVID-19の最中レイオフという言葉を使用する(聞く)機会が増えているが、一時解雇ではなく、リストラ、RIFの事を指す場合が多い。


よって、ここではあえてレイオフという言葉を使用して、解雇について説明をする。昨今ではレイオフをした場合でも再雇用をしない企業も多数あり、本来の意味合いとは異なりレイオフ、リストラ、RIFは同様の意味合いで使用されている場合が多い。

まず、どのような状況であれレイオフを行う際にはリスクが残ることは留意すべきである。ただし、ビジネス上の理由が明確な人選を行うことでリスクを減らすことが可能になる。


特定の年齢、人種、宗教等に偏った、もしくは意図せずとも結果的に偏った人選になった場合には解雇の実施を再検討をすべきである。

ここで述べる「ビジネス上の理由」は、第三者から見てビジネス上の合理的な理由に基づく解雇と解釈されるか、という点である。


パフォーマンスに問題のある従業員を解雇したとしても、企業側に問題を立証する記録がない場合、従業員が企業側の解雇理由と異なる根拠(差別的人選による不当解雇等)で訴える可能性が残る。

その他の検討事項としては①解雇実施日、②退職金の支払いの有無が挙げられる。解雇実施日の選定を行う上でまず考慮すべき点は、最終給与や有給休暇残の支払いである。


カリフォルニア州のようにレイオフ当日に支払いが義務付けられている場合には、最終給与や有給休暇残の支払い手配が解雇日に間に合うか検討する必要がある。

企業の従業員数、そしてレイオフを行う人数によっては、別途遵守すべき法律があることも踏まえ、レイオフの実施は細心の注意を払って行うべきである。

「ファーロー」

ファーローはここ最近特に良く聞くようになった言葉であり、一時的無給休職、または一時的な職務停止という意味合いとなる。レイオフと異なり、ファーローは将来業績が回復することを見越して解雇はせず、従業員を一時無給休職にする措置となり、現在のような先々の状況が不透明な中で度々行われる対応となる。


企業側にとっては、ファーローを行うことで必要な人材を確保しつづけ、業績が回復したと同時にビジネス活動を再開できる利点がある。そのため、多くの企業では、フォーロー中の健康保険は継続して提供し従業員をつなぎとめている場合が多い。

ファーローを行う上で企業としては、①従業員の時短の対応、②将来復職できることを確約しない、③最終給与の支払い日、④健康保険の提供期間、を考慮する必要がある。


ファーローという言葉の解釈が企業により異なる場合もあり、ファーローを行う場合、企業側の理解を対象従業員に明確に伝えることが重要である。短期間の休職で復職を出来るという解釈もあれば、ベネフィットが提供される時短での就労という解釈も可能である。現状では多くの企業では復職は確約出来るものではないかもしれない。

またエグゼンプト従業員を時短就労にした結果、給与水準がエグゼンプトの基準に達しない場合、ノン・エグゼンプトへのステータス変更をする必要がある。

ファーローが1給与期間以上に及ぶ場合、カリフォルニア州では最終給与と有給休暇残の支払い時期も重要な検討事項となる。

最後に、ファーローが予期せず長期化した場合、健康保険の継続提供や雇用継続が困難になる可能性もある。


企業としては、ファーローの実施期間を区切り、ファーロー中の雇用および福利厚生の扱いについて記載した書類を作成することが強く推奨される。作成をした書類を従業員に提示することでファーロー中や終了後の問題を回避することが可能になる。


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