米国ではワクチン接種者も増え、COVID-19の収束が着実に近づいていると感じられる今日この頃である。感染者数や死亡率も過去最低水準を記録しており、数か月前まで世界的に最もCOVID-19の悪影響を受けていた国であったことが過去の記憶になりつつある。
雇用マーケットも順調に回復しており、COVID-19で最も影響を受けた業界の一つであるレストラン、旅行といったホスピタリティ業界はもちろん、ハイテクやその他多くの業界でも募集人員が人材供給を上回っている状態にある。現在の米国では700万件以上の求人がある。
有能な候補者に対して複数の企業からのオファーがある売り手市場であることから、せっかく雇用をした従業員がすぐに新たな企業へ転職をしたり、売り手市場の時に増えるGhosting(候補者からの連絡が途絶える)が再び問題になっている。
The Work Institute社の調査によると、COVID-19以前の米国では毎月350万人が離職をしていたのが、2020年4月には190万人まで減少したものの、雇用マーケットの回復により2021年12月には再びCOVID-19以前の水準の毎月330万人まで増加することが予測されている。
多くの企業でリモートワークやリモート雇用が継続されている中で、候補者を探すこと以上にRetention(保持)が重要となっている。
離職理由は従業員の数だけ無数にあるが、従業員が自主的に離職をする場合の理由として最も多く挙げられる2点は以下となる。
より良い報酬と福利厚生(35%)
より良いワーク・ライフ・バランス(25%)
売り手市場である現状、そしてジョブ・ホッピングが一般的な米国の雇用市場においては、「より良い報酬と福利厚生」を理由とする離職は、企業の財力に影響されるものであり、なかなか企業努力だけでは防ぎづらいことである。
他方で「より良いワーク・ライフ・バランス」という点は、企業のクリエイティビティが問われる部分であり、改善策を検討する余地がある。
経済が再開される中で、今後のリモートワークの計画やハイブリッド・ワークプレイスの導入等がまず検討可能な事項である。
同時にCOVID-19禍の中でオフィス出社をしなくなったことで、企業文化が低下したと感じている従業員が多数いる。離職率は従業員エンゲージメントを高めることで抑えることが可能であり、①従業員からのフィードバックを受けての社内制度改革、②評価の促進、③企業文化の構築を行うことが必要となる。
新規で雇用をした従業員には前述した点が特に重要となる。とりわけリモートで雇用をする場合には、インタビューを通じて、より具体的な企業文化や業務内容を提示することが望ましい。
リモートワーク雇用で良く言われるのは「Find candidates who don’t need babysitting(必要以上の管理が必要の無い候補者を探す事)」である。自主的に仕事を進めることができる人材かどうかを、採用過程において、今まで以上に戦略的に見極める必要がある。
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