米国で最も人気のあるスポーツであるNational Football League、今年もNFLが開幕して盛り上がっている。
NFLに限ったことではないが、世界的に有名なスポーツチームも差別やハラスメントで話題になることがある。
最近では、ワシントン・コマンダーズ(旧ワシントン・レッドスキンズ)で、チアリーダーや主に女性職員からの告発により大規模なハラスメント、そして環境型ハラスメント(Hostile Work Environment)が発覚し調査が行われた。
余談であるが、差別的な表現であるということから、ここ数年の間に、米国のスポーツチームでワシントン・レッドスキンズとMLB(メジャーリーグ)のクリーブランド・ガーディアンズ(旧クリーブランド・インディアンス)がチーム名まで変更している。
ワシントン・コマンダーズではコマンダーズの本拠地があるD.Cをベースとするベス・ウィルキンソン率いる弁護士軍団が、オーナーのダン・スナイダー含む150名以上をインタビューして調査を完了した。
長年にわたりコマンダーズは特に女性にとってプロフェッショナルな環境ではなく、いじめや脅迫が頻繁に行われ、多数の女性従業員がセクハラや職場での一般的な敬意に欠ける言動を体験したと報告された。
報告を受けてNFLのコミッショナーであるロジャー・グッデルは、コマンダーズに対して弁護士費用含め調査に掛かった費用の全額を支払うこと、そして1,000万ドルの罰金を決定した。
今回の調査を率いたウィルキンソンも、オーナーのダン・スナイダー及びチームの経営層に対して、以下対応策の実施を勧告している。
① ハラスメントの報告をするためのプロトコルの策定
被害者が報復行為を恐れずに、匿名でもハラスメント行為を報告が出来るような制度の設計。
② 懲戒処分のプロセスを具体的に文書化
不正行為を特定、 裁定するための明確な手順と正式な懲戒処分計画を策定し、一貫性を持って適用。
③ 定期的な社内調査
問題の対処状況を確認するため、匿名による職場全体、特にハラスメントに関する風土調査を定期的に実施。
④ 定期的なハラスメントの研修
セクシャルハラスメント、その他のハラスメント、多様性と受容、およびその他の職場行動に関する研修を全従業員を対象に定期的に実施。
⑤ 職場の多様化
組織全体、特に意思決定の権限を持つ指導的・監督的立場に立つ女性やマイノリティの人員を増やす計画の策定。
⑥ 明確な権限系統の確立
明確な組織構造と幹部の権限系統を導入。
⑦ HRと法務の在り方の改正
HRや法務の権限を増し、チーム内の高位ポジションからの干渉を受けずに問題が解決出来るような体制を整える。
⑧ オン・ボーディング・プロセスの導入
新入社員のための正式なオンボーディング・プロセス、定期的な人事評価プログラム、退社時の面接または報告手順を設定。
⑨ チアリーディング・チームの保護
今までは保護されていなかったチアリーディング・チームに対しても、人事部やチームが保持している情報へアクセスする権利を確立。
⑩ ポリシーの定期的なレビュー
チームによって選ばれ、リーグ事務局によって承認された外部のコンサルタントを雇い、すべてのポリシーに対する年次評価を実施。
かなり具体的な改定案が提示され、人事面の改善を目的とした組織見直しが要求されることとなった。
職場文化の醸成を行う上で、核となる問題解決を行うことが非常に重要であり、長年培われている文化(それが間違っている場合は特に)の改革には大きな労力が伴う。
問題が大きくなりすぎる前に、解決出来る方法を見つけることが重要である。
今回コマンダーズに提示された10の改定案を全て一気に行うことは難しいかもしれないが、実施できることを一つずつ見直しをしていくことは多くの企業でも可能なのではないだろうか。
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